障害児福祉施設で勤務する中で、「幼稚園や保育園の先生から退園を匂わされた」というご相談を何度も受けてきました。
強制的に「退園してください」とは言われることは、ほとんどありません。多くの場合「お子様にとって他の環境の方が良いのでは?」と園の先生からお話があったようです。
急にそのようなことを言われたら「突き放された」「排除された」などと感じてしまいますよね。
しかし、全くそのように感じる必要はありません。
本記事では、発達を理由に「退園」を匂わされた時の対処法と、園選びのポイントをご紹介します。
嫌な思いから解放されて、お子様が伸び伸び過ごす方法を検討していきましょう。
園から強制退園を言われることはあるの?
●保育園の義務と保護者の権利
児童福祉法第24条は、『市町村は……その監護すべき乳児、幼児又は……児童の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申込みがあつたときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない』と定めています。
これは、保育園側の『児童保育義務』を定めるとともに、保護者に対し、『入所後の継続的な保育の実施を要請する法的権利』を保障したものと解されています。市町村が直接設置する保育所はもちろん、市町村の委譲を受けて保育を行う社会福祉法人なども同様の義務を負うものとされています。
したがって、児童が退園するのは、あくまで、“保護者が仕事を辞めた等の理由で保育の必要性が無くなった”場合か、“保護者から自主的に退園を申し出た”場合に限られるというのが法律の建前です。
TRILLより引用
上記は保育園についてですが、このような見解もあるため、直接的な言葉で園から「退園してください」と言われることはあまりありません。
今の園で「困っている行動」や「難しい行動」に合わせて、「お子様のために」と遠回しに退園を勧められることがほとんどです。困っているのが園側なのか?お子様なのか?分かりにくい話になることが多く、混乱が生じます。
しかし、園側からこのような話をされた際には「お子様のために」退園を考えるのも一案かと思います。
「退園」を匂わされても「お子様が悪い」訳ではない
園側から「退園を匂わされた」ということは、その環境がお子様にとって「安心する場所」ではない可能性があります。
例えば、車椅子ユーザーの方は、階段があるから「困る」のであって、スロープであれば困りは発生しません。
このように「障害」や「困り」は個人だけが原因ではなく、その環境とのミスマッチから生じます。
あくまでも「お子様が悪い」訳ではありません。なので「突き放された」「排除された」と感じる必要はありません。
ミスマッチな場所で頑張り続けるよりも、お子様を受け止めてもらえる場所で過ごした方が断然「安心する」のではないでしょうか?
転園先を探す時の大事なポイント
一度退園を匂わされた経験があると、「次もそうなるのでは?」と不安になりますよね。
そうならないように、「お子様と親御様が安心できる」転園先を探していきましょう。
「お子様にはここが良いですよ」と教えてもらえる相談先は、なかなかありません。
そこで、まずはお子様と親御様が安心することを整理していくことが大切です。
親御様の安心することは何?
お子様だけではなく、親御様が安心できることも大切なポイントです!
まだ小さいお子様は自分で困りを訴えることは難しいので、親御様が窓口になって園とやり取りをすることが多いです。なので親御様が安心して利用できることも忘れてはいけません。
- 緊急事態があった時に送り迎えができる距離?
- 昼食は給食があるか?お弁当持参?
- 親が参加する行事やイベントはどれくらいあるか?
- 園の先生方の雰囲気は親御様自身が話しやすい?
上記などの確認も大切です。全てがパーフェクトに当てはまる場所があるとは限らないので、「ここだけは譲れない」と優先順位をつけておくのも良いですね。
お子様の安心することは何?
お子様がどんな環境だと安心して登園できるか?を考える時は、お子様のことをよく観察することが大切です。
- 前園での様子を退園前に聞いておこう
「どんな場面で困りが出て、どんな場面が楽しんで参加できたか」を聞いておくと、転園先を探す大きなヒントになります。その困りが生じる場面が少なく、楽しめる活動が多い園を探していくことをおすすめします。 - 1日の保育は課題的な時間があるか?自由な時間が多いか?
園の1日の流れをみると、工作や絵画などの課題保育の時間がある園と、自由な時間を大切にしている園の大きく2つに分類ができます。ただ「自由だから安心できそう」ではなく、お子様に合う環境を探していくことも大切です。
例えば、見通しに不安が強いお子様で考えみると…
▶︎課題保育がメインの園
「何をするか」が明確に設定されているので、見通しに不安のあるお子様にとっては分かりやすく安心になる。
▶︎自由保育がメインの園
「自分でやりたいこと」を探す必要があるため、何をしたら良いか不安が生じる可能性がある。
こちらは一例なので、反対に自分で好きなことを探すことが得意なお子様にとっては、自由保育がメインの園が安心しやすい可能性もあります。 - 人数や活動部屋の音や周りの環境はどうか?
音や物や人が多い環境が苦手なお子様もいます。園見学をして、お子様が落ち着く環境かを確認することも大切です。 - イベントや行事は年間にどのくらいあるか?
イベントや行事は「いつもと違う」環境になるので、お子様によっては不安が多くなる可能性もあります。反対にイベントがある方が楽しめるお子様もいます。年間行事などで確認をしましょう。
毎日通うお子様にとっては、なるべく合う環境を探していけると良いですが、親御様同様に全てがパーフェクトに当てはまる場所があるとは限らないので、優先順位をつけていきましょう。
▼こちらも一緒にぜひ確認を!
新しい園が決まったら「話し合い」の場を作ろう
お子様と親御様が安心できる転園先を決定したら、まずは「話し合い」をする時間を確保しましょう。
前園での様子を伝えて、困りが出そうな場面で配慮を受けられることが可能か?を事前に話し合っておくことも大切です。
【例】
偏食が多いので、メニューによってはお弁当を持参することは可能ですか?
大きな音が苦手なので、行事などで大きな音がする際には別室で休憩をしたり、イヤーマフを利用することは可能ですか?
もちろん、園によっては人員などにより対応が難しいこともあるので、話し合いでお互いが歩み寄って「配慮できる方法」を検討していきましょう。
事前にこのような配慮点の見通しがあると、先生も対応しやすく安心です。
大人も転職をするように、その場所に合わないこともあります。それは「個人が悪い」訳ではありません。
「突き放された」「排除された」と考えなくて大丈夫です。
合わない場所で我慢して頑張るよりも、気持ちよく過ごせる場所を探してみませんか?
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